税金滞納と相続放棄に関するQ&A

文責:所長 弁護士 白方 太郎

最終更新日:2025年05月21日

税金滞納と相続放棄に関するQ&A

Q故人(被相続人)が税金を滞納していたのですが、これも相続されてしまいますか?

A

 相続の一般的効力について規定する民法896条は、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」と定めています。

 被相続人が滞納していた税金を納付する義務も、被相続人の財産に属した一切の義務に該当しますので、相続人は、被相続人の預貯金などと併せて、滞納税金を納付する義務も相続することになります。

 なお、滞納税金というわけではないですが、例えば被相続人が事業を行っていた場合、被相続人が死亡した年の1月1日から死亡した日までの所得について、相続人は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税をしなければなりません。

 これを準確定申告といいます。

Q相続放棄をすれば滞納していた税金は請求されませんか?

A

 「相続放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみな」されます(民法939条)。

 相続放棄をすると相続人ではなかったことになりますので、被相続人の滞納税金について請求されることはありませんし、準確定申告を行う義務もありません。

Q故人(被相続人)の滞納税金を納めてしまったのですが、相続放棄できますか?

A

 民法921条は、「次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす」事由の一つとして、「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」を挙げています。単純承認したものとみなされると、相続放棄はできなくなります。

 例えば、被相続人に100万円の滞納税金があり、被相続人の預貯金を引き出して全額納付した場合、預貯金を引き出して滞納税金の納付に充てた行為は「処分」に該当しますので、相続放棄はできなくなる可能性があります。

 他方、相続人の預貯金から100万円を準備して滞納税金の納付に充てた場合は、一般的には処分に該当しないと考えられていますので、相続放棄は可能です。

 なお、例えば3000円程度の滞納税金について、被相続人の現金から納付した、というような場合は、金額も僅少ですので、処分には該当しないと判断されるでしょう。

 ただ、「処分」の考え方については見解もわかれていますので、相続人固有の財産で被相続人の滞納税金を納付できる場合でも、相続放棄を検討しているのであれば、納付は控えた方がよいでしょう。

Q納税義務承継通知書が来ているのですが、相続放棄をした場合何か対応は必要ですか?

A

 税務署等から納税義務承継通知書が届いている場合は、相続放棄の手続きが完了した後、当該税務署に電話連絡して相続放棄を行った旨を伝え、相続放棄申述受理通知書のコピー(または相続放棄証明書)を郵送してください。

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