生活保護を受給している方の相続放棄

文責:所長 弁護士 白方太郎

最終更新日:2024年07月09日

1 生活保護を受給している方が相続放棄をする場合には注意が必要です

 結論から申し上げますと、生活保護を受給している状態であっても、相続放棄をすること自体は法律上可能です。

 ただし、生活保護の受給が続けられるかどうかは別の問題となるので、相続放棄をする前に事前検討が必要になることもあります。

 相続放棄をする前提として、相続が発生していることから、相続発生時点で相続財産がプラスである場合には、生活保護の受給ができなくなる可能性があるためです。

 以下、詳しく説明します。

2 生活保護受給者が相続放棄をするまでの検討プロセス

 被相続人の方がお亡くなりになると、相続が発生します。

 まず、このときの相続財産の内容を把握することがとても大切です。

 遺産を相続したことで、最低限度の生活を維持することができるようになった場合には生活保護法第26条に基づき、生活保護が停止または廃止されることになる可能性があるためです。

 また、生活保護の利用者は、遺産を相続した場合含め、世帯主ないし世帯員に何らかの収入が発生した場合には、生活保護法61条に基づき、速やかに保護の実施機関または福祉事務所長にその旨を届け出る必要があります。

 

 【参考条文】

 (保護の停止及び廃止)

 第二十六条 保護の実施機関は、被保護者が保護を必要としなくなつたときは、速やかに、保護の停止又は廃止を決定し、書面をもつて、これを被保護者に通知しなければならない。(以下略)

 

 (届出の義務)

  第六十一条 被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があつたとき、又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。

 

 そのため、相続が発生したら、相続財産の内容を調査して報告をする必要があります。

 その際、相続財産がプラスである場合には、金額によっては生活保護の受給の可否に影響が生じる可能性がありますので、相続放棄をせず、相続をした方がよいこともあります。

 逆に、被相続人が債務超過に陥っている場合には、生活の状況をさらに悪化させないためにも、相続放棄をしても問題がないと判断される可能性があります。

 いずれにしても、相続財産の状況をケースワーカー等に報告したうえで判断を仰ぐ必要があります。

3 生活保護受給者がお亡くなりになったケースについて

 相続人ではなく、被相続人が生活保護受給者であった場合についても説明します。

 一般的には、被相続人が生活保護受給者であった場合、めぼしい財産はほぼないと考えられるため、相続放棄をすることも多いです。

 念のため被相続人の相続財産を調査した結果、ある程度の財産があった場合には、生活保護の不正受給が発生していた可能性もあり、生活保護費の返還義務(債務)が生じている可能性もあるので、慎重に検討して相続放棄をするか否かの判断をする必要があります。

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