相続放棄をしたら、他の相続人への通知は必要か
1 相続放棄は単独で行える
相続放棄は、各相続人が単独で行うことができる手続きです。
そのため、法律上は、他の相続人に対して相続放棄をする旨を通知する必要はありません。
また、他の相続人と共同して行う必要もありません。
補足をしますと、遺産分割協議のように、相続手続きの中には、相続人全員が共同して行わなければ効力を生じないものもあります。
もっとも、実務上は、他の相続人に対して、相続放棄をする旨を通知した方が良い場合とそうでない場合があります。
以下、説明します。
2 他の相続人との疎遠でない場合
被相続人がお亡くなりになり、その相続について、他の相続人と連絡が取り合える状況である場合、相続放棄をする旨を通知した方が良いです。
他の相続人との関係が険悪でない場合、相続放棄をする旨あるいは相続放棄をした旨を伝えてあげることで、他の相続人の取得分に変動が生じることを認識してもらうことができます。
特に、相続債務の負担が増えることになるため、このことはとても大事です。
また、このようにすることで、他の相続人も一緒に相続放棄をする判断の一助になることもあります。
遺産分割で揉めている場合や、トラブルメーカーの相続人がいて、相続関係から離脱したい場合にも相続放棄は有効です。
このような場合も、相続放棄をする旨を伝えることは大切です。
相続放棄をすると、はじめから相続人ではなかったことになります。
言い換えますと、相続に関わることができなくなります。
他の相続人に相続放棄をする旨を伝えれば、今後一切相続には関わり得ないと宣言するのと類似した効果がありますので、他の相続人からの干渉を抑止することができます。
3 他の相続人と疎遠である場合
一般的には、敢えて相続放棄をする旨を伝えなくてもよいと考えられます。
まず、戸籍謄本等により他の相続人の存在は判明していても、連絡先が一切わからない場合、相続放棄をする旨を通知することは事実上困難です。
実際、相続放棄をすべきケースにおいては、他の相続人と疎遠であるということがよくあります。
そして、他の相続人から見ても、被相続人とは疎遠であったりします。
もし他の相続人の連絡先がわかっても、無理に相続放棄をする旨を連絡する必要はありません。
むしろ、連絡をすることで、相続の開始があったことを知ってしまいます。
そうすると、他の相続人は、連絡を受けた日から3か月以内に相続放棄をするか否かを判断しなければなりません。
そのため、そもそも法律上の義務ではないことと合わせて、連絡をしないという判断が得策であることもあります。
4 管理したくない相続財産がある場合
相続放棄を他の相続人に伝えた方が良いのか、ここまでは他の相続人と疎遠かどうかという視点から見てきました。
ただ、2023年4月の民法改正からは、もう1つ別の視点から他の相続人相続放棄をした旨を伝えた方が良いのかを検討する必要が出てきました。それが、相続放棄後の相続財産の管理義務となります。
相続放棄をすれば、相続人ではなくなるのですから基本的には、相続人の財産を管理する必要はありません。
しかし、「放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているとき」は、相続放棄後もその財産を引き続き管理し続ける義務が規定されました。
例えば、被相続人が建物を所有していて、相続人がその建物で被相続人と一緒に生活していた場合、相続放棄をしてもその建物の管理義務は残ったままということになります。
この管理義務は、他の相続人や相続財産清算人へ財産を引き継ぐまで継続することになります。
被相続人が亡くなった後、相続人もこの家から出てしまい、空き家になっても管理義務が残り、建物の管理不備等で事故が起きた場合には損害賠償請求を受ける可能性もあります。
そのため、管理したくない相続財産がある場合には、早めに他の相続人が財産を引き継いでくれた方がリスク回避につながります。
このような場合は、リスク回避のため、財産を引き継いでくれる他の相続人に自分が相続放棄したことを伝えた方が良いでしょう。
お役立ち情報
(目次)
- 相続放棄のやり方
- 相続放棄をしたら裁判所から呼び出しを受けるか
- 相続放棄申述書の書き方
- 相続放棄の理由の書き方
- 相続放棄の必要書類について
- 相続放棄の手続で必要な書類
- 相続放棄における財産調査でお悩みの方へ
- 被相続人の債務の調査方法
- 相続放棄はいつまでできるか
- 相続放棄の取消しはできるか
- 相続放棄をした場合の固定資産税の支払い
- 相続放棄をした際の死亡保険金の扱い
- 相続放棄をする場合の家の片付け
- 相続放棄をしたら、他の相続人への通知は必要か
- 相続放棄の効果とはどのようなものか
- 相続放棄ができないケース
- 相続放棄が受理されないケース
- 相続放棄の却下率とそのパターン
- 被相続人に関する金銭の請求について
- 相続放棄をした場合の生命保険の扱い
- 相続人が相続放棄したかどうかを確認する方法
- 生前に相続放棄をすることはできるか
- 相続放棄と光熱費
- 相続放棄をした際に代襲相続は発生するか
- 相続財産の処分と相続放棄
- 相続放棄と管理義務
- 相続放棄をする理由について
- 3か月が過ぎてからの相続放棄について
- 相続放棄の注意点
- 相続放棄と遺産分割協議との関係
- 被相続人と賃貸で同居していた場合の相続放棄
- 生活保護を受給している方の相続放棄
- 未成年の方の相続放棄
- 相続放棄をすると故人の賠償金を支払う必要はなくなるか
- 相続人全員が相続放棄した不動産はどうなるのか
- 相続放棄をする場合香典はどうしたらよいか
- 相続放棄と限定承認の違い
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